不適切養育とは

不適切養育とは、文字通り不適切な子供の育て方のことです。子供にとっては、おっぱいを飲ませてもらったり、お風呂に入れてもらったり、おしめを変えてもらうなどのお世話をしてもらうこと、「安全である」と感じさせてくれる優しい働きかけがあること、成長の過程で適切なお手本を示してもらうことなどがとても大切です。そうしたことが適切に行われなかった場合、不適切養育となるおそれがあります。

不適切教育と虐待は違います

「私はとても幸せな子供時代を過ごしました。両親に殴られたこともないし、食事もちゃんと出してもらったし、学校や塾や習い事もさせてもらいました。だから私は不適切な養育なんてされてません。」という人もいるかもしれません。でも不適切養育と虐待とは違います。虐待と言えば、身体的な暴力だったり、言葉による暴力だったり、ご飯を食べさせないなどのネグレクト、性的虐待などでしょう。虐待があったわけでもないのに、大人になった今、なぜ自分に自信を持てなかったり、原因不明の身体の不調を抱えているのでしょうか?実は虐待ではなくても、成長の過程で親から不適切な関わりがあると、心に深い傷を覆い、生きづらさや心身の不調を抱えてしまうのです。

好ましくない育て方と言っても様々です。親が学校の成績や親の収入などで人の価値をきめたり、子供固有の価値を認めなかったり、勉強やスポーツを強要したり、あるいは年齢にふさわしくない性的な情報を与えたり、不適切な性的接触もそこには含まれます。具体的は「そんな学校じゃ近所にはずかしい」「お姉ちゃんの方が優秀だ」「近所の○○ちゃんの方が勉強できる」「それじゃ社会でやっていけない」「お前は容姿が悪い」などがあります。これらは虐待とは言えないかもしれませんが、積み重なると不適切養育になります。

性的な側面での不適切養育

親が子供をレイプするなどは明らかな虐待ですが、一方で虐待とまではいかなくても、不適切な性的かかわりがあると、子供に深刻な影響を与えます。
例えば子供の性的な成長について不適切な言動をしたり、遊びと称して不適切なタッチをしたりすることも不適切養育です。子供が嫌がっているのに、年頃の女の子の身体を触ることも不適切です。またお風呂を覗いたり、子供の下着に触れたりする、アダルトビデオを子供がいるところで見るのも不適切養育です。
しかし、実際には性交を強要されたわけではないので、成長した後も、特に問題はなかったと自分で思い込んでしまいます。

どうしようもない事情によって生じる不適切養育

親が仕事や家庭内の事情で心身ともに疲れきっていて、子供に愛情をかけるエネルギーが残っていないことがあります。また、子供の入院により、長期に渡って親と引き離される場合もあります。事情を理解できないほどの幼い子供にとっては、親から切り離された結果、心細さを感じたり、親から捨てられたと思ったりして心に傷を残す可能性があります。これは親の意図的な不適切養育ではありませんが、発達性トラウマを抱えやすい状況です。

不適切養育の具体例

殴る、蹴るなどの暴行やひどい暴言、性的加害行為などがはっきりとした形で行われていれば、自分は虐待を受けたという自覚も持ちやすいのですが、不適切養育の場合、普通のご飯も食べさせてもらい、学校や習い事にも行かせてもらい、何不自由なく育ったため、幸せな子供時代だったと思い込む傾向があります。そして不適切養育に気づきにくいのです。親も子供を愛していて、子供のために良かれと思ってしていることもあります。ここでは不適切養育になりやすい事例をいくつか列記します。これを読むと、不適切養育は日常のあらゆる場面で起きる可能性があることに気づかれると思います。

・赤ちゃんに思いやりのない言葉かけをする
・子供に体罰を与える
・タイミングよく赤ちゃんのニーズを満たさない
・子供の友人関係に介入しすぎる
・子供の好みや服装に介入しすぎる
・過干渉で子離れできない
・否定的な言動が多い
・抗うつ的で子供の面倒をみられない
・過度の心配性
・子供が必要とするケアをしない
・無理に頑張らせる
・子供に大人の愚痴を聞かせる
・過度に勉強を強要する
・きょうだいを比較する
・子供に夢を託して過度のトレーニングを強要する
・成績で人を判断しランク付けする
・子供の夢を否定する
・子供に嫉妬する
・過度な倹約
・子供の性的な成長を喜ばない
・不適切に性的な情報に触れさせる
・子供に性的な関心を持ち言動に表す
・きょうだい間の性的な加害行為に介入しない
・きょうだい間の加害行為に介入しない

ここまで読むと、こんなことはよくあることではないか、取り立てて不適切ではないではないかと思うかもしれません。しかし、暴力やレイプのようなものでなくても、毎日の生活の中で否定的な働きが繰り返されると、積もり積もって発達性トラウマに発展する可能性があります。
最近では、本人が自覚しているかどうかに関係なく、幼い時の記憶が大人になってからも大きな影響を与えるということが科学的に明らかになってきました。もしあなたが、生きづらさを感じていたり、原因不明の身体の不調があるなら、もしかしたら自分にも不適切養育の体験があったかもしれないと考えてみる必要があるかもしれません。

発達性トラウマと健康上の問題

私たちの神経系は、つねに周囲の状況が安全か否かを感じ取り、判断しています。これをニューロセプションと呼んでいます。発達性トラウマを持つ人は、ニューロセプションが常に危険を察知するように働いていて、ストレス反応(逃走・逃避・凍りつき)を選択するように働きやすくなっています。

発達性トラウマを抱えてしまった人たちは、神経系が常に警戒している状態になることで、消化器系、免疫系、生殖器系などにも影響を及ぼし、様々な健康上の問題を抱えます。例えば、片頭痛、便秘や下痢、冷え性、ストレス性皮膚炎、肩こり、腰痛、めまい、耳鳴り、免疫性疾患、アレルギー、婦人科系疾患、そして機能性不妊症もその中の一つとされています。

バンクーバーの内分泌学者であるㇷ゚ライアー博士によると、機能性視床下部性無月経の原因は、視床下部と下垂体から卵胞に送られる信号の乱れにより、視床下部と下垂体が卵胞を十分に刺激できないことであると述べています。またピッツバーグ大学の研究によると、無月経の女性には一見分かりづらい摂食障害があり、これには未解決の子供時代の問題が密接に関係していると発表しています。

どこに行っても原因の特定できない問題の場合は、発達性トラウマを疑ってみる必要があるのかもしれません。

初めの小さな一歩は、LINE 登録後、20分無料相談であなたのお話お聞かせください。

友だち追加